2026-07-25

旧宮家の男系男子は現在何人いるのか ―― 皇籍復帰案の対象を整理する
旧宮家の皇籍復帰(皇籍取得)が議論されるなかで、多くの人が抱く疑問があります。「実際に対象となる旧宮家の男系男子は、現在、何人いるのか?」。もっともな問いです。けれど、この問いは、単純に人数だけで答えられるものではありません。賛成・反対を論じるのではなく、この問いについて何が分かっていて、何が分かっていないのかを、事実・制度・推測に分けて、ていねいに整理してみます。
旧十一宮家には、現在も男系男子がおられると考えられています。しかし、その方々は今も法律上は一般国民です。2026年7月の改正で制度はできましたが、施行日は10月24日です。氏名・人数は公表されておらず、実際に誰が養子となるかは、ご本人の意思や手続きを経てはじめて決まります。こうした事情から、「旧宮家には○人いる」「この人が皇族になる」と、はっきり断定できる状況ではありません。ただし、どの家に男系男子が続いているのかまでは、報道で伝えられています。賀陽・久邇・東久邇・竹田の4家です。
そして、ここが一番大切なのですが、本当に重要なのは、人数そのものではありません。皇統を安定して次の世代へつないでいくために、どのような制度を設計するか。問われているのは、そちらのほうです。
旧十一宮家とは ―― 1947年まで皇族だった11の宮家
旧十一宮家とは、1947年(昭和22年)まで皇族だった、11の宮家のことです。1947年まで、まぎれもなく皇族でしたが、敗戦後のGHQ占領下の改革のなかで皇籍を離れ、以後は一般国民として暮らしています。この11の宮家は、たどっていくと、すべて伏見宮家という一つの家系に行きつきます。「宮家」とは、本流の跡継ぎが絶えたときの「備え」として、長く皇室を支えてきた存在でした。
男系男子とは ―― 父方をたどれば天皇に行きつく血筋
皇籍復帰の対象として名前が挙がるのは、旧宮家のなかでも「男系男子」に限られます。なぜでしょうか。男系とは、父方をたどると天皇に行きつく血筋のことです。歴代の天皇は、例外なく、この男系で受け継がれてきました。旧十一宮家の方々も、父方をたどれば過去の天皇につながる男系です。
「遠い血筋ではないか」と思われるかもしれませんが、男系という一点でつながっていることこそ、数ある家のなかで旧宮家だけが候補とされる理由です。この「父方の血筋」を重く見る考え方が、男系男子が対象とされる背景にあります。つまり、皇籍復帰案で対象となり得るのは、旧十一宮家の家系に生まれた男系の男子、ということになります。
現在、何人いるのか ―― 人数は公表されていない
旧十一宮家には、今も複数の男系男子がおられると考えられています。ただし、その方々は一般国民であり、氏名や人数といった詳細は、公表されていません。また、実際に誰が迎えられるかは、ご本人の意思や手続きを経てはじめて決まるため、「対象者は○人」と断定できる状況ではありません。ここは、慎重に言葉を選ぶ必要のある部分です。
報道や解説のなかで、具体的な人数が語られることもあります。けれど、それらは公式に確認された数字ではありません。ここで「何人です」と断定することはしません。公的な記録に残っている専門家の発言は、そのまま引用する形で紹介します。一般国民である方々の情報を、確定した事実であるかのように扱うことは、適切ではないと考えるからです。個人のお名前も挙げません。
どの家に続いているのか ―― 名前が挙がる4家
人数は分からなくても、どの家に男系男子が続いているのかは、おおよそ伝えられています。報道では、時事通信が「旧4宮家には未婚の男系男子がいるとされる」と伝えています。衆議院議員の河野太郎氏も、自身のサイトに「すでに男子がなく断絶した家もあり、数家に男系男子が残っている」と書いています。ただし、どちらも家名までは挙げていません。
では、家名はどこで確認できるのか。実は、政府の公式な記録に残っています。2021年(令和3年)5月10日、政府の有識者会議(第4回)に専門家として招かれた百地章氏(国士舘大学特任教授)が、次のように述べています。内閣官房が公表している議事録の22ページです。
②旧宮家のうち、久邇家、賀陽家、東久邇家、竹田家の4家系には、現在20代以下の未婚の男系男子が少なくとも10名はおられると思われる。
同じ会議には、資料3として「旧宮家略系図」も提出されています。同じ4家は、国会でも名前が挙がっています。2025年(令和7年)4月23日の衆議院内閣委員会で、國場幸之助委員が「旧宮家のうち、久邇家、賀陽家、東久邇家、竹田家の四家系には未婚の男系男子がいらっしゃるとお聞きしております」と発言し、会議録に記録されました。つまり、名前が挙がっているのは、賀陽(かや)家、久邇(くに)家、東久邇(ひがしくに)家、竹田(たけだ)家の4家です。

裏を返せば、残りの家々は、男系の男子がすでに絶えているか、続いていても対象となる世代がいない、ということになります。1947年に11あった家のうち、実際に制度が届きうるのは、その一部にとどまる。ここは、押さえておきたい点です。
ただし、ここは正確に受け取る必要があります。これは、政府が「この4家です」と認定したものではありません。有識者会議に招かれた専門家の証言と、国会での議員の発言が、公的な記録に残っている――ということです。政府の最終報告書に家名は書かれていませんし、宮内庁が発表したこともありません。旧宮家の方々は一般国民ですから、国が「この家に何人います」と公表する立場にはないのです。
なぜ、正確な人数が公表されないのか
正確な人数が公表されないのは、隠しているというより、公表できない・すべきでない事情があるからです。第一に、一般国民だからです。今の旧宮家の方々は、私たちと同じ一般国民で、国が個人の氏名を数え上げて公表するような立場にはありません。第二に、プライバシーの保護です。「将来の皇族候補」として個人が特定されれば、生活や人生に大きな影響が及びます。
第三に、制度が動きだす時期の問題があります。制度は2026年7月に成立しましたが、施行日は、その3か月後の2026年10月24日です。「対象者」という枠組みが実際に動きだすのは、施行後です。第四に、本人の意思が確認されていないことです。施行日より前の段階では、「皇族になる意思があるか」を本人に確認する段階にも至っていません。

これらは、どれも当然の配慮です。人数がはっきり示されないことを、「情報を隠している」と受け取るのは、少し違います。一般国民の人生とプライバシーを守るために、示せない――そう理解するのが正確です。
改正法では、誰が対象なのか
2026年7月に成立した改正皇室典範は、養子の対象を、旧十一宮家の男系の子孫で、配偶者と子のいない15歳以上の男性と定めました。迎える側(養親)も、親王・親王妃・内親王・王・王妃・女王にかぎられ、皇嗣・皇嗣妃は除かれています。改正前は、「一定の年齢以上」「未婚の男系男子」といった条件が報道で取り沙汰される段階でしたが、2026年7月の改正で、法律の条文として確定しました。
ただし、条件が決まったことと、実際に誰が対象になるかが決まったことは、別の話です。旧宮家の方々の氏名は公表されておらず、養子となるかどうかは、ご本人の意思や皇室会議などの手続きを経て判断されます。「この条件に当てはまる人が対象だ」と、外から名指しできる状況ではありません。
筆者の考え ―― 年齢と婚姻状況で線を引くことへの疑問
筆者は、旧宮家の男系男子については、現在は一般国民である以上、プライバシーに十分な配慮が必要だと考えています。その観点から見ると、対象を「15歳以上・配偶者と子のいない男系男子」に限った今回の改正には、課題も残るように感じます。
たとえば、対象年齢をはっきり区切ってしまえば、旧宮家の男子がその年齢に近づくたびに、「将来の皇族候補」として報道や取材の対象になりかねません。多感な時期に過度な注目を浴び、場合によっては、SNSなどを通じた誹謗中傷や嫌がらせにさらされることも懸念されます。
「配偶者と子がいないこと」を条件にすることにも、疑問があります。皇族の結婚は、一般の結婚とは比べものにならないほど、多くの制約や社会的責任をともないます。そうした立場になることを考えれば、対象を独身の方だけに限るよりも、配偶者やお子さんのいる男系男子も対象とし、家族単位で皇籍を取得できる制度のほうが、本人にとっても家族にとっても、現実的ではないでしょうか。
もちろん、制度設計には、さまざまな課題があります。けれど、皇統の安定的な維持と、対象となる方の人生・プライバシーの双方を守るためにも、年齢や婚姻状況だけで機械的に線を引くのではなく、より慎重で柔軟な制度設計が望ましい――筆者はそう考えています。今回の改正には附則で30年ごとの見直しが定められています。その機会に、あらためて問い直されるべき点だと思います。
その意味でも、私たちが向き合うべきなのは、「旧宮家に何人いるのか」という数字ではありません。その方々の人生への配慮と、皇籍復帰とは何か、先例はあったのかといった、制度と歴史の中身をていねいに見ていくこと。この二つを見つめることが、この問いへの一番誠実な向き合い方であり、落ち着いた議論の出発点になるのだと思います。
参考・出典
- 皇室典範(昭和22年法律第3号)第9条|e-Gov法令検索
- 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(第4回)議事の記録(令和3年5月10日)|内閣官房(22ページ。百地章氏の意見陳述に4家の家名)
- 第217回国会 衆議院内閣委員会 第16号(令和7年4月23日)|国会会議録検索システム(國場幸之助委員の発言に4家の家名)
- 養子縁組対象に挙がる「旧宮家」、天皇家との関係は?|東京新聞
- 皇室へ養子入り、旧宮家とは? 天皇陛下と共通祖先は室町時代|時事通信(「旧4宮家には未婚の男系男子がいるとされる」。家名は伏せている)
- 旧宮家|衆議院議員 河野太郎公式サイト(「すでに男子がなく断絶した家もあり、数家に男系男子が残っている」)
参考書籍
この記事のテーマを、もっと深く知りたい方へ。
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語られなかった皇族たちの真実
竹田恒泰/小学館文庫。旧十一宮家の側から見た皇室2000年。



